アングル:増える「デジタルノマド」、課題は環境保護との両立

[リスボン 27日 トムソンロイター財団] – ポルトガルの首都リスボン中心部。6月のある朝、営業スペシャリストのビクトール・ソトさん(33)はカフェのテラスに座り、欧州から米州まで世界中の同僚と連絡を取り合いながら仕事に励んでいた。

英国とペルーの二重国籍を持つソトさんが、いわゆる「デジタル・ノマド(放浪者)」になったのは新型コロナウイルスのパンデミックがきっかけだ。

「このライフスタイルは豊富な選択肢と自由を与えてくれる」。旅行に情熱を傾けるソトさんは、完全なリモートワークを認めてくれる企業にしか勤務しないと決めた。

ソトさんの働き方は、デジタル・ノマドの間に広がるもう一つの潮流にも合致する。仕事しながらせわしなく移動するのではなく、1カ所の滞在期間を長くする「スローマド(ゆっくりとした放浪者)」というトレンドだ。より深い文化体験を楽しみたい人々から、飛行機での移動を減らして環境に配慮したい人々まで、その動機は多岐にわたる。

パンデミックに伴う制限措置が解除されて以降、米民泊仲介大手エアビーアンドビーや米ツイッターといった大手企業の対応に後押しされ、リモートワークや柔軟な働き方が流行している。デジタル・ノマド向けに、最長2年間の滞在と労働を認めるビザを発給する国も増えてきた。

<スローダウン>

パンデミック前、典型的なデジタル・ノマドは20代のフリーランスだった。短パンとビーチサンダル、ノートパソコンだけといった身軽さでリゾート地を転々とする若者たちだ。

だが今、仕事と旅行を組み合わせたライフスタイルは、もっと上の世代にも広がっている。多くは家族連れで1カ所に長く滞在し、安い賃料を享受し、地元文化との交わりを深めている。

フリーランス専門の人材会社フィバーと旅行ガイド出版社ロンリー・プラネットが5月に公表した調査結果によると、ノマドワーカーのうち1―3カ月ごとに移動する人の割合は3分の1で、55%は1カ所に3カ月以上とどまると答えた。

デジタル・ノマドの大半を占めるのは米国人だ。米フリーランス専門人材会社アップワークが2021年に実施した調査では、2025年までにリモートワークを行う米国民は3620万人に達すると推計されている。これはパンデミック前に比べて87%の増加となる。

世界各地の観光地はデジタル・ノマドを誘致してロックダウン(都市封鎖)中に被った損失を取り返すため、素早く行動を起こしている。

カリブ海のバルバドス、アフリカ北西沖のカーボベルデ、クロアチア、エストニア、インドネシア、マルタ、ノルウェーの各国は「デジタル・ノマド・ビザ」を導入した。

ただ一方で、デジタル・ノマドが環境に及ぼす影響への懸念も高まっている。1カ所の滞在期間が延びたとは言え、二酸化炭素排出量の多い飛行機を頻繁に利用することに変わりはないからだ。

元デジタル・ノマドのエマヌエル・ギセットさんは、「私たちは少し罪悪感を覚えている。このライフスタイルの一番の問題は飛行機の利用だからだ」と話す。

ギセットさんは現在、リモートワーカーなどにシェアハウスを提供するアウトサイト社の最高経営責任者(CEO)。ノマドの間では、炭素排出量の削減につながる植樹などの活動に資金を提供することで、気候変動への影響を相殺しようとする動きが高まっていると語った。

しかしこうした活動について環境活動家からは、「ごまかし」に過ぎないとの厳しい言葉も寄せられている。

<共同居住地で環境活動>

一方、リモートワークの普及によって居住や仕事の共同スペースが数多く生まれ、その一部は環境保全のための活動を実践に移している。

アウトサイトは最初に手がけたカリフォルニア州の共同居住物件で、予約が1件入るごとにアンデス山脈からインドネシアに至る幅広い地域で樹を一本植えることにした。

ポルトガルの広大な農業地帯、アレンテージョでは2023年夏、さらに野心的な共同居住スペースがオープンする予定だ。デジタル・ノマドやエンジニア、芸術家、暗号資産(仮想通貨)関連の実業家などがコミュニティーを作り、働きながら土地の再生や自給自足生活にも取り組む構想を掲げている。

プロジェクトを計画するトラディショナル・ドリーム・ファクトリーの共同創業者サミュエル・デレスクさんは元ソフトウエアエンジニアでデジタル・ノマド。「経済価値と環境保護を両立させられなければ、人類は本当に種として滅ぶ定めだ」と力説した。

(Joanna Gill記者) 

米石油・ガス掘削リグ稼働数、24カ月連続増=ベーカー・ヒューズ

[29日 ロイター] – 米エネルギーサービス企業、ベーカー・ヒューズの週間データ(29日までの週)によると、米国内の石油・天然ガス掘削リグ稼働数は4週連続で増加し、月間では24カ月連続の増加となった。

前週から9基増の767基となり、2020年3月以来の水準になった。

石油リグ稼働数は6基増の605基で、20年3月以降で最高。ガスリグ稼働数も2基増えた。

月間で石油・ガスリグ稼働数は14基増加したが、昨年9月以来で最小の伸びとなった。

米石油大手のエクソンモービルとシェブロンが29日に発表した第2・四半期決算は、原油と天然ガス価格の急騰を受けて過去最高の利益を計上した。

中国恒大、オフショア債再編で暫定案 香港上場子会社株と交換も

[香港 29日 ロイター] – 巨額の債務を抱える中国の不動産開発大手、中国恒大集団は29日、支払いが履行できていない外貨建て債務について、傘下2社の株式交換を含む再編案を提示する暫定方針を示した。

香港市場に上場する不動産管理サービス会社の恒大物業集団と電気自動車(EV)の恒大新能源汽車集団の株式を含む資産パッケージになる可能性があるという。

再建計画に詳しい関係者はロイターに対し、中国恒大は来月にはグループの資産査定を終え、具体的な条件について債権者と交渉を開始することを目指していると語った。

その上で11月までにより詳細な再建計画を提示し、主要な債権者の承認を得たい考えという。

中国恒大は先月、当初の予定通り7月末までに再建計画を発表すると表明していた。

焦点:韓国不動産ブームが利上げで暗転、借金抱えた消費者に重圧

[ソウル 29日 ロイター] – 最近まで沸騰していた韓国の不動産市場が突如として暗転し、世界有数の規模の借金を背負っている消費者に重圧がのしかかっている。引き金を引いたのは、記録的なペースの利上げだ。

首都ソウルのマンション価格は先週、過去2年2カ月間で最も大幅な下落に見舞われた。6月の売買件数は前年同期比で73%減少している。

2600兆ウォン(約270兆円)に上る不動産関連債務が今、金利上昇の洗礼を受けている。不動産市況が低迷し、住宅ローンの支払い額が増えれば、消費を冷やす恐れが強い。

韓国では家計資産の4分の3近くが不動産市場にひも付けられている。このため政策当局者は、住宅ローン金利の上昇に伴って債務不履行が増え、経済危機が近づきかねないと危惧する。

一般市民は既に痛みを味わっている。生後6カ月の子どもを抱え、ソウル中心部に住むジェーン・ジョンさん(36)は、住宅ローンの支払いが膨らんだため厳しい選択を迫られた。

「夫の給料だけでは月々の返済に間に合わなくなったため、私は産休を早めに切り上げて職場復帰せざるを得なかった」とジョンさん。当初は産休を1年3カ月取るつもりだったという。

ジョンさん一家は5億ウォンの住宅ローンを抱えており、月々の返済額は昨年に比べて72万ウォン増えた。ブローカーからは、月間返済額は年末までにさらに増えて400万ウォン近くになりそうだと聞かされている。これは、夫の月給の70%に達する額だ。

金融監督当局の推計では、住宅ローン金利の平均が現在の5─6%から7%に上昇すると、債務不履行に陥る人の数は50万人増えて190万人に達する見通しだ。

韓国では不動産投資関連のサービスとモノの消費が経済活動全体の約15%を占めている。不動産不況と輸出不振が重なれば、経済成長の大きな足かせとなりかねない。

キウム証券のアナリスト、セオ・ユンスー氏は「韓国の金融システムは世界で最も金利上昇に弱い部類に入る。パンデミック期間中の債務増加幅は世界有数だった」と語る。

「最も大きな問題に直面するのは、最近になって住宅ローンと(投資のための)融資の両方を受けた人々だ」

<住宅ローン金利はさらに上昇へ>

韓国銀行(中央銀行)は昨年8月以来、累計175ベーシスポイント(bp)の利上げを行った。今月は過去最大の50bpの利上げを実施している。

現在2.25%の政策金利は、年末までに2.75%に上昇してピークを迎えるとの見方が多い。既に9年ぶりの高水準に達している住宅ローン金利はさらに上がり、多額の債務を抱えた家庭を締め付けそうだ。

ソウルの住宅価格は過去5年間で2倍以上に高騰した。景気刺激策にあおられた住宅購入から始まり、やがて不動産投機は国民的な「娯楽」へと発展。融資規制が強化され、30代を中心とするミレニアル世代の多くが経済的苦境に陥っても投機は止まらなかった。

韓国の家計債務の対国内総生産(GDP)比率は第1・四半期に104.3%と、世界屈指の高さだったことが、国際金融協会(IIF)が示す主要36カ国のデータで分かる。

規制当局は家計債務が金融システム全体にもたらす影響を和らげようと、固定金利での借り換えを可能にする措置を導入した。この救済策が発表されたのは、韓国中銀が予想外に50bpの利上げに踏み切って2週間たってからだ。

秋慶鎬・企画財政相は今週、「家計債務の構造を迅速に改善する」と表明。「借り換え策が始動すれば、家計債務に占める変動金利債務の割合は78%から73%弱へと、最大5ポイント低下するはずだ」と述べた。

可処分所得に対する債務の比率は、昨年末に206%に達した。

前出のジョンさんは「私たちの財産はマンションが全てだから、何とかやりくりしていく。ソウルから出て行くなんてまっぴら」と語った。

(Cynthia Kim記者)

米当局、ボーイング787納入再開へ検査計画承認=関係者

[ワシントン 29日 ロイター] – 米連邦航空局(FAA)は29日、ボーイングが提出した中型機「787ドリームライナー」納入再開に向けた検査・修正計画を承認した。関係者2人が明らかにした。

検査で承認されれば、ボーイングは2021年5月に再停止した同型機の引き渡しを8月にも再開できる見込みだという。

ボーイングは今月17日、787の納入再開は「非常に近い」と述べていた。

FAAは承認に関する質問に対し「現在進行中の認証についてはコメントしない」と述べた。

FAAは20年9月、787の一部機体に「製造上の欠陥を調査している」と発表。ボーイングは約2年にわたり同型機の生産問題を抱えている。

カナダ経済成長、第2四半期は予想超えへ 大幅な追加利上げ後押し

[オタワ 29日 ロイター] – カナダ統計局が29日に発表した5月の国内総生産(GDP)は、前月比横ばいだった。アナリストは0.2%減少と予想していたが、マイナスには落ち込まなかった。

6月は0.1%の増加を見込むとの推計も発表。これで第2・四半期は年率換算で4.6%成長になる可能性が高まり、9月にも大幅な追加利上げが実施される観測が強まった。

この数字はカナダ銀行(中央銀行)が今月13日に公表した4.0%増という予想のほか、第1・四半期実績の3.1%増も上回る。

統計局は5月のGDPについて、建設労働者のストライキと半導体不足が成長を抑制したと分析した。

運輸・倉庫は前月から1.9%増え、航空輸送は貨物・旅客量増加で14.1%増と急伸。7カ月連続で増加していた製造業は1.7%減少。建設も1.6%減り、2カ月連続で縮小した。

中銀は今月、インフレ抑制のために政策金利を100ベーシスポイント(bp)引き上げた。24年ぶりの引き上げ幅で追加引き上げも示唆した。

デジャルダンのマネジングディレクター兼マクロ戦略責任者のロイス・メンデス氏は、中銀が9月に50bpの利上げを行う見通しを維持していると述べた。

北朝鮮、コロナ流行後初「発熱者ゼロ」主張 死者5万人の見方も

[ソウル 30日 ロイター] – 北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は30日、5月中旬に新型コロナウイルス流行を認めて以来、初めて国内で新たな発熱者が出なかったと報じた。

それによると、移動治療部隊が引き続き警戒態勢にあり、最後の患者が完全に回復するまで「流行を検知し阻止する」努力が続けられているとした。29日時点で204人の発熱患者が治療を受けているという。

一方、世界保健機関(WHO)などの専門家はこれまで、感染症対策が効果を上げているという北朝鮮の主張に疑問を呈しており、ソウルの漢陽大学医学部の申栄全教授は29日、死者が最高で5万人に達している可能性があるとの分析を公表した。北朝鮮は7月5日時点で発熱による死者が74人としていた。

アングル:問題根深いパキスタンの電子ID、数百万人締め出し

[ラホール 26日 トムソン・ロイター財団] – パキスタンでは選挙で投票したり、さまざまな公的サービスを受けるのに電子式の身分証明(ID)カード「CNIC」が必須だが、父親のIDカードを提示しないとCNICを取得できなかった。

しかし母子家庭で育った女性がCNICの発行を求めて起こした訴訟でシンド州の高等裁判所は昨年11月、女性の訴えを認める画期的な判決を下し、母親の市民権記録に基づいて発行するよう当局に命令。母子家庭で育つとCNICを取得できない状況に風穴が開いた。

もっともパキスタンでは女性やトランスジェンダーなど数百万人が依然としてCNIC制度から除外されており、問題は根深い。

訴訟を起こしたのはカラチ出身のルビナさん(21歳)。CNICを手に入れようと3年間にわたって何度も挑戦した挙句、提訴に踏み切った。

「申請に行くと父親のカードを持ってくるように言われる」とルビナさん。「私が生まれた直後に父は私たちを捨て、母が育ててくれた。父のID書類がそろえられるわけがない」

今回の判決により、ルビナさんは母親の定年退職後に州の教育局で母親の仕事を引き継ぐ申請が可能になった。

非営利団体「パキスタン人権委員会(HRCP)」のハリス・カリクエ事務局長によると、今回の判決で母子家庭の子どもは事実上CNICが取得できないという問題に終止符が打たれた。CNICがないと、公立教育機関や医療保障制度を含めたあらゆる公的サービスへのアクセスができない上、銀行口座の開設や就職活動もできず、「端的に言って、市民としての権利がまったくない」

CNICを管轄する国家データベース登録局(NADRA)は、これまで制度から除外されてきた人々への接触に努めていると説明。連邦政府の政策の実施状況を監督する、首相直属の戦略改革チームを率いるサルマン・スフィ氏は、「データベースに登録されるはずの人々を排除しないというのが政府の明確な方針だ」と述べた。

<まるで外国人>

2000年に設立されたNADRAは国の生体認証データベースを管理し、成人の96%に相当する約1億2000万枚のCNICを発行しているという。パキスタンの総人口は約2億1200万人。

各カードは13桁の固有のID番号、本人の写真、署名、マイクロチップで構成され、チップには虹彩スキャンと指紋のデータが記録されている。

しかし女性、トランスジェンダー、移民労働者、遊牧民など数百万人はいまだにCNICを手にしていない。

世界銀行によると、全世界で身分を証明する手段を持たない人は10億人余りに上る。

各国政府はガバナンスを改善するためと称してデジタルID制度の導入を進めているが、国連の人権特別報告者は、こうした制度は疎外されたグループを排除しており、社会保障制度を利用する前提条件にすべきではないと訴えている。

HRCPが昨年行ったカラチの移民労働者への調査で、女性はCNICを持っていないケースが多く、夫が死んだり家を出たりすると貧困に陥る危険性があることが分かった。

親が身分登録をしていないと子どもは出生証明書を取得できないため、特に弱い立場に置かれ、人身売買や強制労働のリスクにさらされているという。

HRCPは、移動式の登録拠点や、特に立場の弱い人々の登録を支援する女性スタッフの増員、さらには手続きの簡素化、移民の申請を難しくしている書類要件の緩和などを提言している。

パキスタンに何十年も住んでいるアフガニスタン難民約280万人のうち、登録しているのはわずか半数。パキスタンには、未登録のベンガル系やネパール系、ロヒンギャ族の移民がかなりの数で存在する。

CNICの発行を求める活動を率いるシェイク・フェロス氏は最近の抗議行動で、「ベンガル系パキスタン人の大多数はCNICを持たず、自分の国であるにもかかわらず外国人や不法移民のように暮らしている」と訴えた。

NADRAは、バングラデシュ、ケニア、ナイジェリアのデジタルIDシステムの構築も支援しており、「特に女性、少数民族、トランスジェンダー、未登録者」に専門に対応する登録部門を設置していると説明している。

「女性が男性職員と接するのをためらうという社会文化的な障壁を克服するため」、特に国境沿いの州には女性専用の拠点が複数置かれ、高齢者や障害者を優先しているという。

<個人データ流出のリスク>

一方でCNICを持っている人はプライバシー侵害というリスクにさらされている。

CNICのデータベースには、税務署から選挙管理委員会、携帯電話サービスプロバイダーまで、公共・民間の約300の機関・企業がアクセスしている。

これまでに何度もデータが流出し、セキュリティが不十分だと指摘されていると、非営利団体デジタル・ライツ・ファンデーションの幹部で弁護士のニャット・ダッド氏は指摘する。「個人情報が流出し、脅迫の武器として使われた女性からハラスメントの訴えを受けることが多い」

パキスタンにはデータ保護法がないため、電話番号など個人情報が流出しても説明責任が生じないという。

(Waqar Mustafa記者)

焦点:中欧諸国、ウクライナ男性が大挙帰国で深刻な労働者不足

[ゴジェフヴィエルコポルスキ(ポーランド) 25日 ロイター] – ポーランドやチェコなど比較的工業化が進んだ中欧諸国では、ウクライナ人労働者が建設現場や工場の組み立てラインなどブルーカラー職場を支える重要な働き手になっている。しかし2月のロシアによるウクライナ侵攻後、大量のウクライナ人男性労働者が戦闘に加わろうと帰国したため、こうした職場では深刻な人手不足が起きている。

企業は女性をブルーカラー職場に配置するための訓練コースを設けたり、アジアの労働者を採用するなど、人材の穴埋めに知恵を絞っている。

ロイターはポーランドとチェコで企業幹部や求人担当者、業界団体、エコノミストなど14人を取材。ウクライナ人労働者の離職が製造業や建設業でコスト増や作業の遅れを引き起こしている様子が分かってきた。

高賃金やビザ要件の緩和が呼び水となり、中欧諸国にはこの10年間にウクライナから大量の労働者が流入。建設、自動車、重工業など、国内の労働者にとっては賃金水準が不十分な職種で雇用を満たしてきた。

中欧ではロシアのウクライナ侵攻前に、ウクライナ人が最大の外国人労働者グループになっていた。業界団体によると、ポーランドとチェコはウクライナ人労働者をそれぞれ60万人前後、20万人余り受け入れていた。

ポーランドの業界団体によると、ウクライナでの戦争勃発後にポーランドを離れたウクライナ人労働者は約15万人で、その大半が男性だ。

ポーランドの路面電車・鉄道建設会社ZUEグループの最高経営責任者(CEO)、ウィスラフ・ノヴァク氏は、下請け業者の1つが最近、線路敷設関連の作業を完了できなかったのは30人のウクライナ人労働者がほぼ全員離職してしまったからだと明かした。

「多くの企業が労働者の大量流出に見舞われ、さまざまな建設現場で大規模な人手探しが行われている」

欧州中央銀行(ECB)は6月、ウクライナ難民の流入がユーロ圏の労働力不足を緩和するとの見通しを示した。しかしユーロ圏以外の欧州工業国では逆のことが起きているようだ。

こうした国に到着した何十万人ものウクライナ難民は女性と子ども中心で、人手が不足しているブルーカラー職を埋めるのは容易ではない。求職があるのは建設、製造、鋳造など肉体的にきつい分野の仕事が多く、こうした職場は女性労働者が運べる重量が法的に制限されている。

チェコ産業連盟のラデク・スピカー副会長は「ウクライナ人労働者の離職で企業は問題が一段と悪化している」と話した。「企業は取引先の需要をすべて満たすことが不可能になっている。納期を遅らせたり、違約金を支払ったりしているのが実態だ」

<埋まらぬ求人>

チェコは国内総生産(GDP)に占める工業セクターの比率が30%と、欧州連合(EU)加盟国中でトップクラス。これに次ぐのが25%のポーランド。

ロシアのウクライナ侵攻前、ドイツに拠点を置く人材紹介会社ホフマン・ペルソナルは3月から6月にかけて1000人余りのウクライナ人をチェコに受け入れる予定だった。

ホフマンのチェコ部門のマネージングディレクター、ガブリエラ・フルバコワ氏によると、ウクライナ人労働者を当てにしていた企業は今、この穴を埋めるのに苦労している。チェコの失業率は3.1%と、EU加盟国で最低水準。フルバコワ氏は「この問題が即座に解消せず、外国人労働者の採用機会が改善しなければ、特に製造業に大きな影響が出るだろう」と語った。

溶接、製造装置操作、金属、フォークリフト運転など資格が必要な製造部門では労働者が数百人規模で不足しているという。

経営幹部や業界団体によると、ウクライナ人労働者離職の影響は、欧州の新興国で特に強く感じられるという。こうした地域は、ドイツなどEU工業先進国に比べて自動化が進んでいないためだ。

電子機器の製造などを手掛けるフィンランドのスカンフィルは、同社が事業展開するポーランドで急激に人手不足が起きたため自動化促進計画を強化した。ただ同社の人事部門の幹部は、自動化が不可能な職場もあり、引き続き多くの労働者が必要だと述べた。

<経済的影響>

BNPパリバ銀行ポルスカのチーフエコノミスト、ミハル・ディブラ氏は、経済データと地元企業からの聞き取り調査を基に、ウクライナ人労働者の離職が少なくとも短期的にポーランド経済に対して悪影響を及ぼすのは明らかだが、その規模を具体的に示すは早計だと述べた。ポーランドはEUで6番目の経済規模を誇る。

企業はウクライナでの戦争によるエネルギーや材料のコスト高騰、パンデミックによるサプライチェーン(供給網)の長引く混乱にさらされており、人手不足の問題が追い打ちをかけた形になっている。企業のインフレ指標である生産者物価指数(PPI)の6月の前年比上昇率はポーランドが25.6%近く、チェコが28.5%だった。

一部の企業は労働者を呼び込むため、給与の提示額を引き上げている。

<企業は人材確保に躍起>

ポーランドの人材派遣会社によると、顧客企業は人手不足に対処するため、男性をより肉体的にきつい仕事に異動させ、その穴を埋めるためにウクライナ難民の女性を採用している。

また働き方を見直し、モンゴルやフィリピンなど、言語や渡航、ビザの問題から迅速な採用が難しい国にも目を向けなければならなくなっている。

人材紹介会社の経営幹部によると、ポーランドは過去13年間でウクライナ人労働者の数が38倍に増えており、こうした対応ではとても追いつかないという。

人材派遣会社が2000人の難民にフォークリフトの操作方法を学ぶコースへの参加を呼びかけたところ、600人余りの女性から回答があり、数十人が最近、4週間のコースの受講を開始した。

受講者の1人で、ウクライナからポーランドに逃れてきた元営業部長のオルハ・ボロビさんは、自動車メーカーの倉庫で職を得た。「ウクライナでは頭を使って働いていた。ポーランドでは体を使っている」と話した。

(Fanny Brodersen記者、Anna Koper記者、Michael Kahn記者)

米ロ外相が電話会談、拘束の米国人解放や穀物輸出など巡り協議

[ワシントン 29日 ロイター] – ブリンケン米国務長官は29日、ロシアのラブロフ外相と電話会談し、ロシアで拘束されている米国人2人の解放に向けた米国の提案を受け入れるよう要請したと明らかにした。

ロシアのウクライナ侵攻後、初の会談となる。

ブリンケン長官は、ラブロフ外相と「率直かつ直接的な対話を行った」とし、ロシアで拘束されている米女子バスケットボールのブリトニー・グライナー選手と米元海兵隊員のポール・ウィラン氏の解放に向け「米国が提示した実質的な提案を受け入れるよう要求した」と語った。

米国は今週、グライナー、ウィラン両氏の帰国に向けた提案を数週間前に行ったと明らかにした。関係筋は、米政府が取引の一環として、米国で服役中のロシアの武器商人との身柄交換に応じる用意があるとするCNNの報道を確認した。

ロシア外務省は声明で「拘束中のロシア人と米国人の交換の可能性に関し、ロシアは『静かな外交』を通じ問題に対処する慣行に戻ることを強く提案した」とした。

ただ、国家安全保障会議(NSC)の報道官は「第三国に拘束されているロシアの暗殺者を釈放するために不当に拘束されている米国人2人を人質に取ることは真剣なカウンターオファーではない。ロシアが取るべき取引を回避しようとする不誠実な試みだ」と非難した。

ブリンケン長官はまた、ロシアがウクライナからの穀物輸出を巡る合意を履行する必要があると伝えた。ロシアとウクライナは22日、ウクライナに滞留する穀物の輸出再開に向けた合意文書に署名した。

ラブロフ外相はブリンケン長官に対し、米国による制裁が世界の食料問題を複雑にしているという認識を示した。

ブリンケン長官はさらに、ロシアによるウクライナの一部地域の編入計画を巡り、「世界は編入を認めない。ロシアが計画を進めるなら、われわれはさらに重大な代償を科す」とけん制した。

これに対し、ラブロフ外相はロシアがウクライナでの「特別軍事作戦」の目標を達成すると言明した上で、米国と北大西洋条約機構(NATO)による武器供与が「紛争を長引かせ、犠牲者を増やすだけだ」と批判した。